2023年3月22日水曜日

新装なった神奈川県立図書館 後れ馳せの訪問

久々に神奈川県立図書館 へ



AlexaによるPixabayからの画像


先日、抱えていた幾つかの懸案事項が無事解決し、晴れ晴れした気持ちで久々に図書館に行ってみた。
わたしがいつも足を運ぶのは神奈川県立図書館です。

交通機関と徒歩で片道1時間程度のものですが、なかなかの運動量になり、程よい距離だと自身では思っています。(万歩計で片道4000歩ほど)


そんな神奈川県立図書館、実は昨年(2022年)9月に新装オープンしています。
わたしは新型コロナの影響で当館が一時閉館していたこともあり、しばらくはご無沙汰でした。

開館後も1、2回来館しただけで、訪れることをできるだけ控える、当時の言葉で「自粛」をしたまま現在に至っていました。
そのため、この日はほんとうに久々の図書館でした。



今回新築された新館は「本館」と呼ばれ、従来棟と隣接して建てられているので場所的にはほとんど変わりません。
現時点ではここだけがオープンしています。

従来「本館」だった棟は「前川國男(注1)館」、また、これまで「新館」だった棟は「収蔵館」と、それぞれ名称を変えて存続するようですが、現在はリニューアル中で一般の人は入れません。


新「本館」の印象について

先ずは、建物本体と場所についてです。
これまで青少年センターや県立音楽堂は知っていても、県立図書館は何処かわからないという人が多かったのではないでしょうか。
それくらい地味な存在だったように思います。

従来の2棟(旧本館と旧新館)は紅葉坂通りから多少奥まっていたので、分かりづらかったのも事実です。

今度の場所は従来棟と隣接していますが、紅葉坂通りに面しているので、これまでよりも分かりやすくなっています。

外観は白を基調にしていて、今までよりもガラス面が多いので開放的です。


紅葉坂通りに面したNew「神奈川県立図書館」本館


一見して図書館とわかる建物ではありませんが、「神奈川県立図書館」と彫られた立派な石柱が道路に面して立っているのですぐ分かります。

入口を入ると建物内は、外観から想像する以上に広く、椅子や机が余裕を持って配置されていて、落ち着いた空間になっています。

一階には今流行りの喫茶スペースもありますが、某**Coffee(注2)ではありません。
ちなみに、一杯注文してみましたが、コーヒーは注文するとその場で淹れてくれる方式のようで多少時間がかかります。

味の方はマアマアといったところでした。


際立つ運営面での改善点

これについてはかなりの改善点があったように私は感じました。

真っ先に感じたのは、作業スペース(机など)が広くなったことです。
この点に関しては、筆者の別ブログ「JD Library 憧れの図書館とは」でも訴えてきたことですが、一般的に日本の図書館は、書籍の充実を第一主義に考えてきたためか、学習スペースが疎かにされてきた印象を強く持っていました。

アンケート等での要望だったのか経緯は分かりませんが、机が大きくなり、隣との距離も確保されているので圧迫感がありません。それが複数エリアに配置されているので、ある程度混み合っても空席を探す苦労は今のところなさそうです。
この点は映画や雑誌等で見かける欧米の図書館との決定的な相違だと感じていたので、実現に至って非常に嬉しく思います。

筆者の自宅の狭いデスクでの学習に比べ、余裕あるスペースで静かに作業できるので能率アップも期待できそうです。


次に評価できるのが、マイバックやパソコンの持ち込みが自由になったことです。
従来は、マイバックはロッカーへ、パソコンはその都度受付で申告していたと思いますが、
その手間が省けました。
これに関しては、わたしたち利用者側の性善説に期待した図書館側の施策と思われますので、この点は、わたしたちは不正や心無い行為がないよう注意し、ルールを遵守して行かなければと思います。


ChenによるPixabayからの画像


ただ、劣化した面もあります。

これは、前述の現在改装中の「前川國男館」や「収蔵館」が本格運用されれば改善されることかも知れませんが、視聴覚資料(音楽CD、レコード等)については、一般書籍のように現物が棚などに陳列されていないため、所蔵資料データーベースにアクセスしコンテンツを検索確認し予約しなければなりません。

館内の受付で直接貸し出し依頼した場合などは、係員に収蔵庫まで取りに行ってもらわなければなりません。
これは時間と労力の無駄遣いです。
係員、利用者の両方にとってもストレスかと思います。

このことは大きな問題というか弊害です。
できるだけ早い改善を切に願いたいところです。

また、上述の問題に関連して、次のような事柄にも影響があることも併せて指摘しておきたいと思います。


検索はみなに優しいとは言えない

「ググる」なんて新語が一般化し、パソコンによる検索という操作が、今や誰でもできて当たり前の時代の中で、わたしたちは生活しています。
そして、ほとんどの図書館やブックストアーでも書籍の検索(システム)機が設置されています。広い館内、店内を探し廻らなくても、端末の画面から目的の書物を探し、確認し、予約などができる訳です。
大変便利なことだと思います。

しかしながら、わたしたちが図書館やブックストアーに脚を運ぶのは、欲しい本が既に決まっているときだけでしょうか。
決してそんなことはないと思います。「なにか面白そうな本はないかナ?」とか、まったく当てもなく出かけるときもあるでしょう。
そんなときは、検索(システム)機に頼るのではなくて、最も原始的な方法である本棚を順に見て行くのです。図書館においては特にその方法が一番だと思います。
利用者にとって、現物が目の前にあることが何よりありがたく分かりやすい訳ですから。


さらに資料検索においては、二つのケースが考えられます。

一つ目は「世の中には存在するが、当該データーベースにはあるかどうかを調べる検索」と、二つ目は「検索キーワードに近い資料はどんなものがあるのかを調べる曖昧検索」です。
一つ目の検索結果は「ある無し」であり、二つ目は複数の検索結果が想定されます。

何れにしても必要なのは、探し物に対する一定程度の事前知識(そのコンテンツの存在を前もって知っているという)を持っていることです。
しかしながら、現状、視聴覚資料については収納庫に収められていて、私たちの面前にない訳ですから、来館者はPC画面上の資料一覧表(イメージ画像なし)を眺めても、目的のものかどうかの実感は薄いと思います。
やはり、目の前の本棚、ラックなどに現物の本やCDが並んでいる方が、探しやすいし意外な発見ができるかもしれない訳です。

図書館を訪れる利用者の目的は人それぞれです。特定の書籍を探す人もいれば、漠然とした目的で訪れる人もいるでしょう。

新刊や比較的新しい書籍ではなく、過去に出版されていて極めて珍しい本との思いがけない出会いなどあれば、図書館の存在価値はますます上がると思います。
ブックストアーでは味わえない、こうした偶然の出会いを期待して図書館を訪れる人もいるのです。


Gerd AltmannによるPixabayからの画像


仮に検索システムから、目的物を探せたとしても、現状の配置方法では思いがけないものを発見という図書館ならではの醍醐味(魅力)は実感できないと思います。

現状のデーターベースの検索結果画面には、書籍の表紙やCD、レコードのジャケット画像もありませんから至って無味乾燥です。

この点に関しては早期の改善を期待したいところです。


図書館の役割と神奈川県立図書館に期待すること

厳しい指摘もあったかと思いますが、全体を通しては絶賛とまではいかないまでも、何度も脚を運びたくなるような好印象をもちました。
前述の拙者のブログ「JD Library 憧れの図書館とは」でも、行列ができるような図書館には行きたくない旨の意見を申し上げてきました。一時の流行に左右されることなく、地味でありながら必要不可欠であって持続性ある存在であってほしいと思います。


PexelsによるPixabayからの画像


図書館の存在意義を考えたとき、宣伝までして来客集めをするようなことは必要ないと思ってきました。そう考えると、今回このブログで新しくなった「神奈川県立図書館」を取り上げることには、自身の中で葛藤もあり幾分ためらいはありました。
例えば、お気に入りの場所やお店などを、人に教えたくない的な心境と被るところもありました。

しかしながら、公共機関や法人関連の建物では、そこで何をしているのか一般人には分からない施設が多々あります。このことは行政にとっても、わたしたち住民にとっても放置すべき問題ではないと思います。
行政による情宣活動と住民の関心(好奇心)を高めることで、こうしたマイナー施設を有効利用できるようにしていかなければなりません。
私自身の興味のあることと、身近なところからということで、神奈川県の貴重な図書館施設を一部の人たちの専有にしてはいけないと思い投稿しました。

とは言うものの、マイブログの訪問者数では体勢を動かすようなことはないでしょうが・・・(笑)。


現在、新生「神奈川県立図書館」は新築された本館以外は、全館がスタートした訳ではありませんが、新本館をみる限り建物の概要、運営上のポリシーには期待できそうです。
これまでの「図書館の問題点を洗い出し、検討し、改善し」の一連の痕跡を見たような気がしました。
現在改装中の「前川國男館」や「収蔵館」がこの先、どのような形で私たちに一般公開されるのかが、今から楽しみです。

JDA 2023.03.22


注 )解説

(注1)前川國男 :県立図書館旧本館を設計した建築家。
          世界的建築家ル・コルビュジエに師事。

(注2)某**Coffee :猿田彦珈琲 神奈川県立図書館店

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